PC-9821Ls150 のオーバークロック方法

2003/06/17 更新

はじめに

 ここでは Ls150 のオーバークロック方法について解説します。具体的には 166MHz 化、ベースクロックの 80MHz 化、倍率の変更方法、原発乗っ取りについて説明します。

注意 半田付けの経験は必須です。ない人は出直してきましょう。

166MHz 化

 まずは Ls150 のオーソドックスな(?)オーバークロック方法である、166MHz 化から説明します。
 Ls150 は、ベースクロック 60MHz となっており、これを CPU 内部で 2.5倍にすることで 150MHz で動作しています。このベースクロックを 66MHz に変更することで 166MHz にオーバークロックできます。そして、ベースクロックは SC484 というクロックジェネレータが 14.318MHz の水晶発振子を元にして作り出していて、これが 66MHz を出力するように設定を変更すればよいというわけです。
 実際の作業の説明に移ります。まず SC484 を見つけましょう。SC484 はマザーボードのほぼ中心にあります。黒い絶縁用のシートの下になっていますのでそれを取る必要があります。SC484 のすぐ下にチップ抵抗が3つ並んでいます。さらにそのすぐ下にもランドが3つ並んでおり、真ん中だけチップ抵抗がついています。右端のランドを半田でショートすれば、166MHz 化は完了です。簡単ですね。
 写真付きで説明が見たい方はPC-9821 Note 改造リンク集を参照してください。

参考 この方法を Ls12 に使えば、133MHz で動作させることができます。

補足 機種によっては3つ並んでいるランドのうち、真ん中だけでなく左端にもチップ抵抗が付いている場合がありますが、どちらの場合も右端のランドをショートさせればベースクロックが 66MHz になります。(2001/09/30)

ベースクロックの 80MHz 化

 ベースクロックを 80MHz に変更して 80 * 2.5 = 200MHz で動作させようということです。が、よほど運が良くない限り動きません。起動時のピポッという音さえしなかったという例や Windows の起動時にハングしてしまったという例を聞いたことがあります。(中には CPU が壊れてしまった人もいるらしい!?) 私の場合はそれなりに運が良かったのか、Windows は普通に起動できました。しかし、スーパーπの計算は途中でエラーが発生してしまいました。そんな状態でも MP3 の再生などはできたのですが、25分程度連続で使っていたら例外が発生してハングアップしてしまいました。放熱をよくするために Ls150 内部に銅板を入れてみましたが、35分程度でハングしてしまいました。
 以上のことをふまえて、作業の説明に移ります。まず前述の方法でベースクロックを 66MHz に変更しておいてください。次に SC484 の 11pin を足上げしてください。SC484 のピッチはかなり狭いですから注意してください。以上でベースクロックの 80MHz 化は完了です。

注意 SC484 の 11pin の足上げは慎重に行いましょう。ピンを折ってしまったら、ベースクロックを 60/66MHz に戻すことはできなくなってしまいます。またピンを何度も上げ下げしないようにしましょう。2度目に上げたら折れたという話をいくつか聞いたことがあります。

注意 IC のピンの数え方がわからない人や足上げの意味が分からない人は出直してきましょう。

倍率の変更方法

 80 * 2.5 = 200MHz ではよほど運が良くない限り動きませんが、80 * 2 = 160MHz ならば、かなりの確率で動くのではないかと思います。160MHz だと、前述の 166MHz に比べて CPU の速度は若干落ちますが、逆に HDD のアクセスやグラフィックアクセラレータの描画速度などが向上します。使い方にもよりますが、総合的には 160MHz の方が若干パフォーマンスがよいようです。
 というわけで倍率を 2.5倍から 2倍に変更する方法を説明します。まず、マザーボードにつながっているコネクタ類をすべて取り外して、マザーボードを本体から取り外してしまいます。マザーボードを裏から見ると次の図のようになっています。

Mother Board(裏面)

 CPU の周辺を拡大すると次に図のようになっています。(かなり省略しています。) 大きい方の黒い長方形はチップコンデンサー、小さい方の黒い長方形はチップ抵抗です。白い長方形はシルク印刷はされているが部品はついていない部分です。

CPU 周辺

 図中に赤丸で示した 0Ω抵抗を取り外すと倍率が 2.5倍から 2倍になります。倍率の変更はなかなか面倒ですね。(ちなみにこの 0Ω抵抗は CPU の BF1 (185pin) に接続されています。)

参考 Ls12/13 の場合は逆に赤丸の部分を半田でショートさせれば、150/166MHz で動作させることができるかもしれません。
(1999/10/21) この方法で Ls13 を 166MHz 動作させることに成功したというメールをいただきました。

補足 1 3倍にする方法はまだ分かりません。分かれば 66 * 3 = 200MHz なども試してみたいのですが。(Mobile Pentium では 3倍にできないという話も聞いたことがあるのですが資料を入手していないので・・・。)
Ls150 では、BF0 (186pin) は直接 GND に接続されているため 3倍にすることはできません。また、Mobile MMX Pentium (133〜166MHz) のデータシートには、3倍の設定はサポートしていないとの記述があります。仮に BF0 を足上げ(!)するなどして 3倍設定にしても、実際に 3倍で動く可能性は低いと思われます。

補足 2 図中に赤丸で示した 0Ω抵抗を取り外す代わりに、その隣の 0Ω抵抗を取り外せば、3倍になるかもしれないという情報を nokenoke さんからいただきました。私自身はまだ試していませんが、気が向いたらやってみようと思います。(2000/02/23)
赤丸の 0Ω抵抗の隣の抵抗は 0Ωではありません。

補足 3 参考資料

原発乗っ取り

 クロックジェネレータの基準発振用の水晶発振子を別の周波数のものに交換することを俗に「原発乗っ取り」といいます。
 SC484 のすぐそばに 14.318MHz の水晶発振子がありますが、これをさらに高速なものに交換するわけです。私の場合は 16MHz に交換してみました。現在私の Ls150 は、(80 * 16 / 14.318) * 2 = 178MHz で動作しています。ベースクロックが定格の 1.5倍となった効果はやはり大きく、HDD の転送速度もほぼそれに比例して向上するため、速くなったことが体感できます。ただ、さすがにちょっと無理があるのか、長時間使っていると DOS 画面にノイズが出ることもあります。また、チップセットもかなり発熱しますので、これの放熱対策も必要と思われます。
 実際の作業方法は・・・説明するまでもありませんね。

SC484 に関する資料

 データシート: sc484.pdf (93,845bytes)
 このデータシートは IMITech Support からダウンロードしたものですが、現在はダウンロードできません。

 以下は Ls150 をオーバークロックする際に参考となるデータを、データシートから抜粋したものです。

SC484
SC484 のピン配置
出力周波数の設定
S2S1S0output
0 0 066.6MHz
0 0 180.0MHz
0 1 060.0MHz
0 1 150.0MHz
1 0 033.3MHz
1 0 140.0MHz
1 1 050.0MHz

ベンチマーク結果

 HDBENCH Ver 2.300 での結果と Ver 2.610 での結果が混在していますので注意してください。

 ちなみに 178MHz で Superπ 104万桁は 11分 33秒でした。

標準 (60 * 2.5 = 150MHz)

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.300  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 150MHz
解像度     800×600 65536色  
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95  4.0 (Build: 1111)
Date       1998/10/ 4

SCSI = PCSC-F UltraSMIT PCMCIA SCSI Card for PC-98
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

AB = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
C = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
D = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write  Cache Drive
 6434  8665  9267  9524  2130  4486    74  59  3072  3454  17241 A:10MB

66 * 2.5 = 166MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.300  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 166MHz
解像度     800×600 65536色  
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95  4.0 (Build: 1111)
Date       1998/10/ 5

SCSI = PCSC-F UltraSMIT PCMCIA SCSI Card for PC-98
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

AB = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
C = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
D = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write  Cache Drive
 6892  9542 10238  9445  2376  4538    74  59  3255  3872  18691 A:10MB

66 * 2.5 = 166MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.610  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 166.7MHz [GenuineIntel family 5 model 4 step 4] 
解像度     800x600 65536色(16Bit)  
Display    [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95 4.0 (Build: 1111)  B
Date       1999/10/ 7  14:22

SCSI = Adaptec APA-1460/A SCSI Host Adapter
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
E = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write Memory Drive
 5379  9790 10218  9560  2372  4583    74   4  2998  3438  9812  A:10MB

80 * 2 = 160MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.610  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 159.4MHz [GenuineIntel family 5 model 4 step 4] 
解像度     800x600 65536色(16Bit)  
Display    [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95 4.0 (Build: 1111)  B
Date       1999/10/ 7  21:54

SCSI = Adaptec APA-1460/A SCSI Host Adapter
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
E = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write Memory Drive
 5413  9384  9791  9562  2416  4605    74   4  3410  4063  9487  A:10MB

80 * 3 = 200MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.610  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 199.2MHz [GenuineIntel family 5 model 4 step 4] 
解像度     800x600 65536色(16Bit)  
Display    [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95 4.0 (Build: 1111)  B
Date       1999/10/ 8  23:15

SCSI = Adaptec APA-1460/A SCSI Host Adapter
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
E = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write Memory Drive
 6131 11741 12252  9596  2817  4713    74   4  3748  4107 11790  A:10MB

89 * 2 = 178MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.610  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX) 178.0MHz [GenuineIntel family 5 model 4 step 4] 
解像度     800x600 65536色(16Bit)  
Display    [X]スタンダード ディスプレイ アダプタ (9821 シリーズ)
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     81,324Kbyte
OS         Windows 95 4.0 (Build: 1111)  B
Date       1999/10/22  14: 9

SCSI = Adaptec APA-1460/A SCSI Host Adapter
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
E = KONICA OMD-7061         Rev 3.02
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write Memory Drive
 6100 10498 10954 10715  2715  5161    83   5  4155  4518 10650  A:10MB

89 * 2 = 178MHz

 ★ ★ ★  HDBENCH Ver 2.300  ★ ★ ★ 
使用機種   
Processor  Pentium(MMX)
解像度     800×600 65536色  
Display    PC-9821 Ls12/150,La13 (Cirrus)
Memory     31,156Kbyte
OS         Windows 95  4.0 (Build: 1111)
Date       1999/10/10

SCSI = Adaptec APA-1460/A SCSI Host Adapter
HDC = スタンダード IDE ハード ディスク コントローラ

ABC = GENERIC IDE  DISK TYPE00    
D = GENERIC NEC  FLOPPY DISK    
Q = TOSHIBA CD-ROM XM-1502B  Rev 3058

  ALL   浮    整    矩    円   Text Scroll DD  Read Write  Cache Drive
 7887 10193 11091 10691  2715  5147    83  66  4122  4214  22726 A:10MB


戻る

Copyright (C) 1999-2003 K.Takata